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医療廃棄物研究会

 第9回医療廃棄物処理技術セミナーが平成14年10月25日(木)に長崎大学で開催されました。猪狩会長の挨拶のあと、長崎大学環境保全センターの石橋康弘先生よる「医療廃棄物の焼却処理の可能性と新しい小型焼却炉の開発」ならびに健康保険諫早総合病院検査部の今村文章先生による「医療廃棄物の委託処理に際して何を確認しているか」の講演が行われました。
 質疑応答も積極的に行われ、廃棄物を処理する立場と排出する立場の双方にとって非常に関心の高い内容であったことが感じられました。講演後、長崎大学環境保全センターの実験廃棄物処理施設の見学が行われました。参加者数は36名でした。本セミナーの開催にあたり会場設営、施設見学等にご協力をいただいた長崎大学環境保全センターの皆様に深謝いたします。

 講演要旨はつぎの通りです。
  • 医療廃棄物の焼却処理の可能性と新しい小型焼却炉の開発   石橋 康弘
  • 医療廃棄物の委託処理に際して何を確認しているか    今村 文章

医療廃棄物の焼却処理の可能性と新しい小型焼却炉の開発
長崎大学環境保全センター 石橋 康弘
  1. はじめに
     感染性の廃棄物の処理は、これまで焼却処理が一般的であったが、ダイオキシン類の排出が問題とされ、平成12年1月には「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行され、平成14年12月にはその排出基準がさらに厳しくなるため、工業、教育機関、官庁、病院及び一般家庭等における小型焼却炉ではその基準を満たす事が出来なくなることから、廃棄物の焼却処理を自主規制あるいは廃止する方向に動いている。
     しかし、焼却処理はいくつもの利点を有しており、焼却処理を無くしてしまうことは、現実問題として難しいと考えている。
     ここでは、廃棄物の焼却処理の可能性についての私見を述べるとともに、当センターの取り組み及び我々の研究グループが開発を進めている新しい焼却処理技術について概説する。
  2. 焼却処理の必要性
     感染性廃棄物の処理は微生物の不活化が重要なポイントとして上げられるが、「焼却法」ではオールマイティに処理することが可能であるが、代替処理法として上げられる代表的な処理技術「感熱滅菌法」及び「高圧蒸気滅菌法(オートクレーブ処理法)」では、処理対象物や処理容量についてある程度考慮する必要があり、不活化という点からも焼却処理と比較すると劣ると考えられ、オールマイティというわけにはいかなくなる。
     また、焼却処理の利点として、減容効果が上げられるが、他の処理法では減容効果は期待できない。そのため、廃棄物の発生量の増加が懸念されるところであるが、埋め立て処分前にさらに焼却され減容化されていることもあるようであり、こうなると、その処理が意味を持たなくなるということになる。
     このような利点を有する焼却処理技術を無くさないためにも、1)高効率(従来処理速度の2倍以上)、2)低コスト(従来コストの半分以下)、3)耐火煉瓦フリー(ステンレス鋼板製)、4)ダイオキシンフリーの「完全燃焼」が可能な焼却炉の開発が必要と考え、以下のような焼却炉の開発を行っている。
  3. 長崎大学環境保全センターにおけるダイオキシン類対策
     長崎大学では、実験廃液の焼却を継続するために、以下のような対策を取り、現在も焼却している。
    • 燃焼物(廃液)管理によるダイオキシン類の低減
    • 燃焼管理によるダイオキシン類の低減
    • 二次フィルターによるダイオキシン類の吸着除去
    • 排ガスモニターによるその他の汚染物質の監視
  4. 新しい小型焼却炉の開発
     ダイオキシン等の微量有機物質は燃焼過程、熱回収、ガス冷却過程及び排ガス処理過程において、不完全燃焼生成物の塩素化によって発生すると考えられている。従って、焼却処理におけるダイオキシン類の抑制に際し、まず考えるべき事は「完全燃焼」である。大型炉での完全燃焼技術は幾つかあるが、小型炉で完全燃焼する技術はまだ確立されていない。
     一般に、完全燃焼を達成する条件は、1)高い燃焼ガス温度(Temperature)、2)十分なガスの滞留時間(Time)、3)炉内での十分なガス攪拌・二次空気との混合(Turbulence)の「3-T」であるとされる。これらの条件が、燃焼ガス中の未燃炭化水素及び前駆体物質を減らすための必要条件である。
     我々の研究グループは、これらを達成する方法として水蒸気注入と旋回流を組み合わせた新燃焼方式を試み、小型焼却炉での完全燃焼の実現を目指している。この焼却炉の実現は廃棄物の排出者にとって非常に有効活用できるでなく、環境保全にも大きく貢献できると考えている。
     なお、本研究の一部は、環境省科研費及び長崎県の補助を受けたものである
医療廃棄物の委託処理に際して何を確認しているか
健康保険諫早総合病院
検査部技師長 今村 文章
 昭和42年公害対策基本法が国民の健康を保護し、且つ生活環境を保全することを目的に制定。1)大気汚染 2)水質汚染 3)土壌汚染 4)騒音 5)振動 6)地盤沈下 7)悪臭 など総合的に取り上げられ、環境汚染などの認識が高まってきた。これはその後、医療廃棄物法やリサイクル法に罰則法など含め法的整備が進められ今日に至っている。
 そのような背景の中、医療廃棄物においては排出者側や処理業者の二次感染や不法投棄、処理不全などの問題が巷を騒がせて来た。医療廃棄物を排出する当事者として今回、以下の5点ほどに絞って発言したい。
  1. 当院における廃棄物のシステムについて
    今までの経過と現状について報告し、特に当院の液体系(一般雑排、水医療廃液、重金属溶液、有機溶剤など)廃液については強調したい。
  2. 廃棄物排出者としての問題点
    廃棄物が複雑且つ増大化している現状。
    分別の問題
    経費の認識と生産性のバランス
  3. 今後の廃棄物排出者としての役割
    廃棄物の少量化、分別の簡素化、試薬内容物の公開
  4. 求められる委託業者のモラル
  5. 委託業者の選定について
    資質と能力のチェック
    日々の管理体制のチェック
まとめとして医療廃棄物については排出者の医療サイドと処理業者の真摯な対応が不可欠であり今後、双方の職員、あるいは施設の責任ある監視体制を難しいコスト面も含め互いに研鑽しなければならないと考える。
 処理業者の中ではすでにチェック機構が出来ていると聞いてはいるが、やはり第3者あるいは排出者である医療施設のチェックと処理業者の社内情報の公開が必要であろうと考える。
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